2013年10月からこのサイトを始め、約8年半ほど低頻度で更新してきましたが、DNのサービス終了により今回で最後の更新です。
マジックに関する記事を書くのも楽しかったのですが、移転等はせず、今後マジックについての記事を書くことはない予定です。
これまでお読みいただきありがとうございました。

普段の記事よりもさらに需要がないように思えて前々回・前回のような個人の妄想・感想的な記事はこれまで書かなかったのですが、予想よりアクセスが多く驚きました。
タイトルに釣られた方が多かっただけなのかも知れませんが、もしかするとこういう記事をメインにしていた方がよかったのかもしれません。

最後に、私が2015年にモダンのために構築し、尊敬するデッキビルダーであるまつがんプロの「週刊デッキウォッチング」で採り上げて頂いた《白日の下に》を用いたコンボデッキについて、「これは書いておいた方が良かった」という補足的な話をします。


当時の私の記事一つ目……11/8《白日の下に》コンボで4-1-1@晴れる屋休日モダン杯
https://monstling.diarynote.jp/201511092255033248/

当時の私の記事二つ目……11/14《白日の下に》コンボで入賞@晴れる屋休日モダン杯
https://monstling.diarynote.jp/201511162134268923/

まつがんプロの記事……週刊デッキウォッチング vol.42 -Kiki Bring etc.-
https://article.hareruyamtg.com/article/article_2098/

キキジキコンボ/Kiki Combo
土地(25)
1 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
1 《沼》
1 《燃えがらの林間地》
1 《大草原の川》
1 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
1 《寺院の庭》
4 《湿地の干潟》
4 《霧深い雨林》
4 《新緑の地下墓地》
3 《乾燥台地》

クリーチャー(26)
4 《極楽鳥》
4 《タルモゴイフ》
4 《復活の声》
2 《刃の接合者》
1 《永遠の証人》
1 《台所の嫌がらせ屋》
4 《包囲サイ》
4 《修復の天使》
2 《鏡割りのキキジキ》

呪文(9)
4《流刑への道》
4《白日の下に》
1《掘葬の儀式》

サイドボード(15)
1《悪斬の天使》
1《嵐の神、ケラノス》
1《鷺群れのシガルダ》
1《呪文滑り》
1《引き裂く突風》
1《塵への崩壊》
1《消えないこだま》
1《殺戮遊戯》
4《亡霊の牢獄》
3《原基の印章》


このデッキは他の方のDN等でも何回か採り上げて頂きましたが、根本的な考え方が理解されていない場合があった気がします。
もしかすると、まつがんプロにも理解されていなかったかも知れません。

当時、スタンダードにもフェッチランドとバトルランドを組み合わせた多色デッキは(5色の《白日の下に》デッキを含め)存在しており、私の「Kiki Bring」もそれらと同様のマナベースと認識されるケースがありました。
ただ、当時のスタンダードの多色デッキと「Kiki Bring」とには大きな違いがあります。
当時のスタンダードのフェッチランドとバトルランドは両方とも友好色の組み合わせで、それぞれのフェッチランドにアクセスできない色がありました。
例えば《吹きさらしの荒野》では黒マナにアクセスできません。
しかし、私の「Kiki Bring」では採用しているフェッチランドは全て敵対色のもので、これらをバトルランドと組み合わせる場合、どのフェッチランドでも全色のマナにアクセス可能になります。

当時のスタンダードの5色デッキでは、基本的には最序盤にフェッチランドで基本土地をサーチしなかったはずで、その理由はそれぞれのフェッチランドにアクセスできない色があり裏目を引く可能性があるからだったのではないでしょうか。
敵対色フェッチランドの採用により「Kiki Bring」ではフェッチランドの偏りによる裏目がなくなり、バトルランドを安定して活用できるようになりました。
例えば初手に「《沼》1枚と《《湿地の干潟》》4枚」があった場合、一見偏っていて色マナに不自由しそうですが、これでも「Kiki Bring」の理想とする1ターン目に緑、2ターン目に緑白、……5ターン目に白青黒赤緑、という展開がタップインなしに可能です。

私は「Kiki Bring」を構築した時にまず《白日の下に》を使うことを大前提とし、「モダンにはこれまで5色呪文を4~5T目に唱えることを前提としたデッキはない。もしそういうデッキを組むなら、誰も見たことがないマナベースにしなければならない」と考え、敵対色フェッチランドとバトルランドの組み合わせに至りました。
これを思いついた時の私は、まさに福本漫画でいう「この時電流走る……!!!」状態でした。

もう何年もモダンはプレイしていませんが、このデッキは現代のモダンには通用しないだろうとは思います。《敏捷なこそ泥、ラガバン》にマナの出る土地を1枚追放されるだけで詰みかねません。
また、もし通用するとしてもこのデッキは5色のイメージにそぐわない地味な動きになるため、多くの人は使いたがらないと思います。
ただ、こういう考え方のマナベースがあり得るということは、覚えておくといつか役に立つかも知れません。


これまでお読みいただき、ありがとうございました。
もうマジックに関する記事は書かない予定とは言いましたが、いつか新しいデッキを考えたら新たなスペースを借りて記事を書くかも知れません。
もしそうなった時には、またよろしくお願いいたします。
前回の記事(https://monstling.diarynote.jp/202202271010548965/)の続きですので、未読の場合そちらからお読みください。
前回は近年のスタンダードのカードデザインの背景についての個人的な妄想で、今回は何故今のスタンダード環境がつまらないと思うのかについての個人的な、《Old Fogey》並みの感想です。

まず、私がつまらないと思うデッキについて。
個人的に、昔から戦っていて面白くないデッキに大きく分けて5つのタイプがあると思っています。

ワースト5の第五位、5つの中では最もマシなのが、盤面にあまり干渉せずに勝利を目指すコンボ系のデッキです。
こういうデッキはそこまで支配的なデッキとならない場合が多く、高頻度で対戦することはあまりない印象ですが、数か月以上高頻度で対戦するとうんざりします。
例えばウルザブロック時代にはMOMAやメグリムジャーとも対戦し、あまりの強さに圧倒されましたが、間もなく禁止により大幅に弱体化・消滅したためそこまで悪印象はありません。
初代ゼンディカー時代のヴァラクートは長期間トップメタであり続けたコンボデッキで、私としてはかなり悪印象です。

ワースト5の第四~二位は、パーミッション、フルパーミッション、メガパーミッションです。
私は勝手に、コントロールデッキのうち大体8~12枚程度の打ち消し呪文が入ったものをパーミッション、16枚程度の打ち消し呪文が入ったものをフルパーミッション、20枚程度の打ち消し呪文が入ったものをメガパーミッションと分類しています。
なお、ドロー呪文の枚数等にも関係するので必ずしも打ち消し呪文の枚数と打ち消しの頻度は比例するわけではありませんし、そもそも打ち消し呪文が多い方が強いというわけでもありませんが、戦っていて非常に苦痛なのがこれらのデッキタイプです。
パーミッションで印象的だったのはカウンターポスト(http://mtgwiki.com/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%83%88)等、フルパーミッションで印象的だったのはドローゴー(http://mtgwiki.com/wiki/%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%BC)、初代神河期のヤソコン(http://mtgwiki.com/wiki/%E3%83%A4%E3%82%BD%E3%82%B3%E3%83%B3/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%89/%E7%A5%9E%E6%B2%B3%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%8B%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E6%9C%9F)等、メガパーミッションではユーロブルー(http://mtgwiki.com/wiki/World_Championship_Decks_1998)です。
この記事のテーマから外れるため、パーミッション系のデッキの話はここまでです。

そしてワースト一位は、攪乱的アグロです。
攪乱的アグロの定義も人によってさまざまで、また時代によっても変わってきますが、基本的には、アグロのうち一般的なものよりも打ち消しや除去やマナ拘束等の妨害手段が多く投入されていて、クリーチャーの数やサイズで優位に立つことよりも、相手の除去やブロックを妨害することを重視したデッキと考えています。
多くのデッキにとって打ち消しや除去等は身を守るための防御手段であるわけですが、攪乱的アグロでは自分の攻撃をサポートするために打ち消しや除去を使うことが多い、ということになります。

攪乱的アグロはカウンタースリヴァー、フィッシュ等とも呼ばれ、クロックパーミッションと同一視されることもありますが、正確には攪乱的アグロのうち打ち消しを重視したものがクロックパーミッション、という認識です。
攪乱的アグロを使用されたり使用したりした際のゲームのつまらなさは、筆舌に尽くしがたいものがあります。

知る限りでは攪乱的アグロというデッキタイプがトップメタとして初めて成立したのは1999年のエクステンデッドで、テンペストブロックの登場以降存在はしていたもののそこまで有力ではなかったカウンタースリヴァーに《Demonic Consultation》《誤った指図》が投入され活躍するようになってからです。
スタンダードでも攪乱的アグロはしばしば活躍を見せ、ローウィン(2007年)期のフェアリー、二代目ミラディン(2011年)期のCaw-Blade、初代イニストラード(2011年)期のデルバー、三代目ゼンディカー(2020年)期の青黒ならず者等、環境で支配的だったデッキもあります。

私としては、攪乱的アグロは使われても使ってもとにかくチマチマしていてつまらない印象しかありません。
私が尊敬するデッキビルダーである浅原プロは、こう書かれています。
『(略)そもそも、自分は「デルバー」というデッキが嫌いオブザ嫌いなのだが、何で嫌いなのか? というのを考えてみた。そして、一つの真理に辿りついた、その答えもまた効率化だったのだ。
 20点ちょうど削るようなデッキよりは、大雑把に100点とかのダメージを与えて派手に勝つほうが好きなのだ。』
https://mtg-jp.com/reading/gekijo/0003707/

攪乱的アグロは必ずしも最強デッキというわけではなく、攻撃クリーチャーと妨害カードを適切なバランスで引けないともろさを露呈することも珍しくありません。しかし、勝利の際には相手の動きを封じて完封勝利するような展開になることも多いためか、好んで使用するプレーヤーも一定数いる印象です。

攪乱的アグロは、フィニッシャー足りうる強力な軽量クリーチャーと軽量の除去や打ち消しがないと成立しにくいデッキで、人気はあるものの常にスタンダードにあるわけではないデッキタイプでした。

しかし、近年攪乱的アグロと見なせるデッキが次々登場しています。
2018年~2019年に活躍した青単テンポ、2019年~2020年に活躍した青緑フラッシュ、2020年~2021年に活躍した青黒ならず者などは皆さんの記憶にも新しいでしょう。
そして私に言わせていただくなら、ここしばらくトップメタの一角を担い続けている白単や緑単も十分攪乱的アグロです。

白単なら2~3ターン目から次々フィニッシャーと呼べるクリーチャーを展開し、後は《スレイベンの守護者、サリア》《傑士の神、レーデイン》《精鋭呪文縛り》で反撃を封じ、ブロッカーを出されても《運命的不在》《スカイクレイブの亡霊》等の白らしからぬ強力な単体除去で排除可能です。
緑単でも2~3ターン目から次々フィニッシャーと呼べるクリーチャーを展開し、後は《蛇皮のヴェール》等で除去を防ぎ、ブロッカーを出されても《吹雪の乱闘》《豊穣の碑文》等の緑らしからぬ強力な除去で排除可能です。

無論、上記の白単や緑単は無敵のデッキというわけではありません。
既存の攪乱的アグロの多くがそうであるように、攻撃手段が欲しい時に除去的なカードばかりを引いてしまうといったムラはあります。
しかし、はまると相手の動きを封じて完封勝利する展開になることも多く、まさしく攪乱的アグロです。

私は、白単アグロの面白さは除去がなくてもクリーチャーの数や回避能力でビートダウンを完遂しうることであり、緑単アグロの面白さは除去がなくてもクリーチャーの大きさでビートダウンを完遂しうることであると思っていて、正直なところ多数の単体除去を採用してブロッカーを片端から除去してビートダウンする白単や緑単なんて見たくありませんでした。
2020年6月に私をミシックに導いた、土地27枚とクリーチャー48枚を詰め込み《集めるもの、ウモーリ》を相棒にした緑単アグロ(https://monstling.diarynote.jp/202006201153598698/)は、私の考える緑単の面白さの結晶です。

2021年9月のローテーション以降数か月間、多少の変遷はありますが基本的にスタンダードは白単アグロ、緑単アグロ、青赤天啓がトップメタとなっていました。
トップメタ3つのうち2つが戦っていて最もつまらないタイプのデッキなのですから、スタンダードがつまらないのも当然です。
またトップメタの残り1つ青赤天啓も、それほど盤面に干渉せず土地を伸ばして《アールンドの天啓》連打での勝利を主眼とするデッキで、私としては先ほどワースト5の第五位に分類した「盤面にあまり干渉せずに勝利を目指すコンボ系のデッキ」に近い、戦っていてつまらないデッキです。

上で書いたように攪乱的アグロには軽量のフィニッシャーと除去や打ち消しが必要ですが、前回の記事で書いたとおり2019年頃から各色に除去が与えられたため白単や緑単でも攪乱的アグロが成立するようになりました。
白単や緑単に次々と強力な単体除去を与えたのは、前回書いたように強力なシステムクリーチャーによってゲームバランスを崩壊させないためだったのではないかと思えますが、それによって各色の役割(カラーパイ)が崩壊してしまいました。

例えば、以前緑には高コストだったりペナルティ付きだったりする万能パーマネント除去《砂漠の竜巻》《内にいる獣》や、非効率的なダメージ呪文である《スズメバチの一刺し》等がありました。
これらは現在はカラーパイ違反の許されないカードとして名指しされており、緑のクリーチャー除去は制約のある格闘や噛みつき(http://mtgwiki.com/wiki/%E5%99%9B%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%81%8D)やブロック強制によることとされました。そして開発チームは「格闘や噛みつきでの除去ならどんなに強くてもいい」とでも考えているのか、そういった除去のいくつかは超強力です。
しかし、カラーパイには本来、制約やペナルティがあってもその色が得意でないことをするパワーカードを作るべきではない、という理念がありました。

特に、ペナルティはあるものの白に強すぎる単体クリーチャー除去を与えた《流刑への道》は、2010年に公式記事「論述問題」(https://mtg-jp.com/reading/translated/0003916/)で「印刷されるべきでなかった」と評されました。
それを考えると、制約はあるものの《吹雪の乱闘》の強さといったら……。

私は、《吹雪の乱闘》なんてものを作って攪乱的アグロを実現させるよりも、《砂漠の竜巻》を再録していた方がよほどよかったと思います。
なお、上で言及した「論述問題」には、青のバウンス能力を白に移動することを検討したが白のアグロが強くなりすぎるのでやめたという趣旨の記述がありますが、複数の構築レベルの単体除去を与えられた2020年頃からの白単はまさにそのような状況になっています。

そして近年、除去に限らずカラーパイが崩壊していて、どの色でも優秀なクリーチャーを展開し除去しドローし……と大体何でもできる、という印象を受けます。
特に私にとって納得が行かないのがドローです。

長い間、《Wheel of Fortune》《森の知恵》《よりよい品物》のようなわずかな例外を除けば複数枚のドローができるのは青と黒とアーティファクトのみで、例えば赤使いはドローの代わりに《オークの司書》のライブラリー操作を使用したりしていました。
その後2012年~2013年には赤にルーター系のドロー(《信仰無き物あさり》等)や衝動的ドローの役割が与えられ、後者はだんだんと定着していきましたが、その頃は「まあ仕方がないのか」と思っていました。
そして2019年から緑にも強力なドロー能力(《エッジウォールの亭主》《グレートヘンジ》《秘密を知るもの、トスキ》《群れ率いの人狼》等)が次々与えられるようになり、「緑は青をもしのぐ最強のドロー色」といった声も目にするようになりました。
「さすがに白にはドローを与えないよね、《弱者の師》だって公式から名指しでカラーパイ違反と言われていたし」と思っていたら、《歓迎する吸血鬼》《婚礼の発表》がデザインされました。
何故全色に構築レベルのドロー呪文/能力を与える必要があるのか、私には理解できません。
公式の記事を見ると、統率者戦での需要が大きな理由であるようですが、私には「ドローがしたいなら青か黒かアーティファクトを使えばいいじゃないか」としか思えません。

私としても、青や黒以外に構築レベルではないドロー呪文/能力がある分には仕方がないかと思うのですが、《舞台照らし》《スカルドの決戦》や、禁止となった《僻境への脱出》等を見てもデザインチームは「色の役割にあったドローなら、壊れ寸前の強さにしてもいい」と考えているとしか思えません。
スタンダードのカードではありませんが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》は登場直後から使用可能なあらゆるフォーマットで攪乱的アグロの衝動的ドローカードとして猛威を奮いました。
私としては衝動的ドローだろうと赤の構築レベルのドロー能力など見たくありませんし、攪乱的アグロは滅多に出会いたくないデッキタイプなのですが、開発チームとしては推奨したい能力でありデッキタイプなのかも知れません。

こうしたカラーパイ崩壊の結果、今ではどの色でもある程度「序盤から強力なクリーチャーを展開しながらドローして除去して勝つ」というような動きが可能になっていて、長年公式が重視してきたカラーパイとはいったい何だったのか、と強く思います。
私はどの色のデッキもある程度使いますが、それでも「白や緑に強いクリーチャー単体除去やドローを作るな、青に強いクリーチャー除去を作るな、黒にノーリスクの強力カードを作るな、赤に強いドローを作るな」とずっと思っています。

今の開発チームは、どちらかと言うとカラーパイをなくして「どの色でも何でもできる」ようにしたいのかも知れないと思えます。
私は、「カラーパイによって各色にできることには制限があり、制限の中でデッキを組むかあるいはリスクを負って多色化するかを考えるのもマジックの楽しさだ」と考えているため、今のカードデザインは楽しめないのだと思います。
ちなみに私は、壊れたパワーカードも嫌いですが色の役割を無視したカードも大嫌いで、現スタンダードで一番嫌いなのは前回の記事でも触れた《鴉変化》《再造形》です。
開発チームには、これらを作った経緯についていつか書いて欲しいと思っています。

さて、私は上でカラーパイの崩壊について述べましたが完全に崩壊したわけではなく、特定の色が保持している能力もあります。
しかし、その保持のさせ方に納得が行かないものもいくつかあります。

例えば、瞬速はもともと主に青の妨害をかいくぐるためにデザインされた《キング・チータ》が初出の緑の能力でしたが、その後特に青に増えていき、「メカニズム的カラー・パイ 2017年版」(https://mtg-jp.com/reading/mm/0019007/)では最も得意とする色は青と定義されました。なぜ、青対策の能力を緑からほぼ奪い青に与えてしまうのか納得がいきません。
《船砕きの怪物》というのは本当に何なのでしょうか……。

また、もともと打ち消されない能力も《スクラーグノス》が初出の緑の能力でしたが、今は打ち消されないクリーチャーも青が最強になっています。なぜ、青対策の能力を青に与えてしまうのか納得がいきません。
《船砕きの怪物》というのは本当に何なのでしょうか……。

また、強力な除去耐性である呪禁は以前はクリーチャーの能力としては緑専門でしたが、基本セット2012からは青クリーチャーの呪禁も増えていき、「メカニズム的カラー・パイ 2017年版」では呪禁を最も得意とする色は青と定義されました。
呪禁の後継的な能力である護法についても青は事実上最強になっています(《ストーム・ジャイアントの聖堂》《砂漠滅ぼし、イムリス》)。
何故クリーチャー最強のはずの緑から、クリーチャー最弱のはずの青に除去耐性を移してしまうのか、納得が行きません。

無論、これらの能力が完全に緑から奪われたわけではありませんが、現状の青対策の切り札のはずの緑クリーチャー《岩山鎧のベイロス》は《ストーム・ジャイアントの聖堂》や《船砕きの怪物》を突破できない程度の性能しかもっていないわけで、理解に苦しみます。

また、自ターン以外の行動を禁止するカラーパイも以前は緑で(《宝石の広間》《孤独の都》《落葉の道三》)、赤にも近い役割のカードがありましたが(《魔力の奔流》《苦痛の城塞》等)、現在は完全に《ザルファーの魔道士、テフェリー》等の青と、《堂々たる撤廃者》等の白に奪われました。
何故青対策の能力を緑・赤から奪って青・白に移してしまうのか、全く納得が行きません。

また、以前は青以外の各色にも打ち消しがあり、緑は上の「メカニズム的カラー・パイ 2017年版」の時点でも限定的な打ち消しのカラーパイを保持していましたが、2006年の《虚空粘》《運命の回避》、2008年の《耳障りな反応》以降緑の打ち消しと見なせるカードは収録されておらず、《虚空粘》は2017年に《不許可》にリメイクされ、今は青に役割を完全に奪われた感があります。
(《エリマキ神秘家》のようなカードは、「青の打ち消し+緑のクリーチャー」というデザインと考えますので、ここでは扱いません。2021年のモダホラ2では唐突に《新緑の命令》がデザインされましたが、スタンダード外ですのでここでは扱いません。)

どう考えても緑は青に能力を奪われ過ぎで、開発チームは「どの色でも序盤からフィニッシャーを展開してドローして除去していい、ただし打ち消しができるのは青だけで、打ち消しに対抗できるのも青だけだ」という信念でも持っているのではないかとすら思えてしまいます。

ちなみに、《ガイアの伝令》が初出である他の呪文への打ち消しを無効にする常在型能力は、《運命を紡ぐ者》等多少は緑にも登場し続けているものの、《溺神の信奉者、リーア》《心優しき霊》等を見ると青に奪われつつあるようにも思えます。
青の打ち消し禁止能力はクリーチャー呪文を守れない等の制約があるものが多く、緑のものとある程度差別化はされているようですが、将来が不安になります。

以前、開発チームは土地渡り能力の廃止について、こう説明していました。
『土地渡りは威嚇と同じような問題を抱えていたが、さらに深刻なものだった。その該当する土地を使っていたら、どうやってその土地渡りクリーチャーに対抗すればいいのか? その基本土地をプレイしない? マジックはやりとりがあってこそ面白いので、土地渡りはその条件を満たしていないのだ。』
https://magic.wizards.com/ja/ja_mm_20150608

近年のマジックでは、クリーチャーをブロックしようにも展開したクリーチャーを片端から除去されてあらゆるブロックができないことが多すぎ、土地渡り能力どころではないやりとり不足になっていると感じます。
《Old Fogey》の一匹としては、2~3T目からどんどんフィニッシャーが出てくる現状のパワーレベルを引き下げ、緑や白の強すぎる単体除去を減らしてやりとりができるようにして欲しいと切望します。
(1)この記事は、おおむね私の妄想です。
(2)私にとって近年のマジックのカードデザインはつまらないものですが、そういうカードデザインが悪だと思っているわけではなく、ウィザーズの開発チームを非難する気は全くありません。
(3)私にとってつまらないと思うデザインのカードを使うプレーヤーを非難する気も全くありません。接待ではないのですから、相手にとって楽しいカードを使う義務などないと思っています。私自身もつまらないカードをよく使います。

スタンダード視点での話です。
近年、ウィザーズ社はマジックのカードデザインについていくつかの大きな方針を決定したのではないかと考えています。
例えば、カードパワーを全体的に上昇させること(https://mtg-jp.com/reading/pd/0033449/)。明言はされていませんが、スタンダードプレーヤーはもちろん下環境を主戦場とするプレーヤーにもアピールできるようなパワーカードも継続的にデザインし続けることを目指しているように思えます。
また、当事者カード、いきなり裏面からプレイできる両面カード、キッカー、予顕、切除、魂力、《冥途灯りの行進》サイクル、《悪意の熟達》サイクル等、複数のコストでプレイできるカードを増やし、手札でカードが腐りにくくしたのもその一つなのでしょう。

そういった新たな方針の一つに、配信の際に派手な見栄えになるよう強力な誘発型能力を持つカードを大量にデザインし続けるというものがあるのではないかと私は妄想していて、それがこの記事のテーマです。

近年、個人や企業がゲームを配信する機会が増えましたが、マジックの配信は映えないという懸念がありデザイナーが目を付けたのが、1アクションでバババッとスタックが積まれる誘発型能力だったのではないでしょうか。
呪文を唱えるとバババッ、攻撃するとバババッ、ターン終了時にバババッ、これは映える!……こうして、馬鹿馬鹿しいほどに強力な置物やシステムクリーチャーが次々とデザインされるようになったのではないかと思えます。
(この記事では、「置物」を「マナ能力以外の継続的に使用できる能力を持つエンチャントやアーティファクト」という意味で使用します)

ターン終了時に《荒野の再生》《夜群れの伏兵》がバババッと誘発!
出来事呪文を唱えて《幸運のクローバー》が誘発、クリーチャー側で唱えて《エッジウォールの亭主》が誘発!
パーマネントを生贄に捧げて《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》がバババッと誘発!
変容を重ねて変容誘発型能力がバババッと誘発!
サイクリングで《ドラニスの刺突者》《雄々しい救出者》がバババッと誘発!
土地を出して《水蓮のコブラ》《創造の座、オムナス》の上陸がバババッと誘発!
《軍団のまとめ役、ウィノータ》を出して総攻撃でバババッと誘発!
クレリックが戦場に出て《生命の絆の僧侶》《正義の戦乙女》のライフゲインがバババッと誘発、ライフゲインによりさらに《生命の絆の僧侶》《クレリック・クラス》の強化能力がバババッと誘発!
《食肉鉤虐殺事件》でリセット、ライフゲインとライフルーズがバババッと誘発!

置物やシステムクリーチャーではありませんが、複数のパーマネントを追放しそれらのCIPをバババッと再誘発させることが容易な《空を放浪するもの、ヨーリオン》、二つのCIPを持つ《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《死の飢えのタイタン、クロクサ》もこの方針に沿ったデザインなのではないかと思えます。《風景の変容》があるスタンダードにあえて《死者の原野》を突っ込んだのも、CIPをバババッと誘発させたかったからではないかと考えてしまいます。
その意味では、毎回同じタイミングで誘発する能力を持つ「英雄譚」の急増も、この方針に沿ったものと解釈できなくもありません。

特に印象的だったのが《軍団のまとめ役、ウィノータ》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》のデザインで、通常なら自身の攻撃で戦闘ごとに一回のみ誘発するデザイン(《オレスコスの王、ブリマーズ》《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》等)や、CIPで一つのパーマネントのみを追放するデザイン(《ちらつき鬼火》《修復の天使》等)だったのが、このデザイン方針のおかげでここまでのパワーカードになったように思えます。
ご存じのとおり、強烈過ぎるカードパワーやシナジーにより、《荒野の再生》、《幸運のクローバー》、《大釜の使い魔》、《創造の座、オムナス》、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》、《死者の原野》、《裏切りの工作員》は禁止となりました。何枚かは、誘発型能力を優遇しすぎたがゆえのバランス崩壊だったのかも知れません。

無論、昔から凶悪な置物やシステムクリーチャーは存在しました。
私は1996年にマジックを始めましたが、その頃のカードでは制限カードの《土地税》《黒の万力》、1999年に大量に発生した禁止カードでは《大地の知識》《ドリーム・ホール》《繰り返す悪夢》《精神力》が印象的でした。
他、禁止されなかったカードでは、《冬の宝珠》《ネクロポーテンス》《呪われた巻物》《貿易風ライダー》《適者生存》《ドルイドの誓い》《ルーンの母》《対立》あたりも印象的でした。
1999年に大量の禁止カードが発生し、その後少しの間置物についてはカードパワーはやや控え目になっていたように思いますが、《霊体の地滑り》等強力なものはありました。またシステムクリーチャーについては、《渋面の溶岩使い》《ゴブリンの名手》と下環境でも通用する強力なティムが続けてデザインされたのが印象的でした。
そしてミラディン(2003年)の《大霊堂の信奉者》、ダークスティール(2004年)の《頭蓋骨絞め》《電結の荒廃者》で置物やシステムクリーチャーの強さは再び限界を突破し、これらは禁止カードに指定されました。

ダークスティール以降、しばらくはカードパワーの面からは比較的平和な時代が続きました。神河謀叛(2005年)の《梅澤の十手》、ワールドウェイク(2010年)の《石鍛冶の神秘家》等強力過ぎる置物やシステムクリーチャーが登場しゲームバランスに深刻な影響を与えることはありましたが、全体的にはそういうカードの登場頻度は抑え目になっている印象があり、私は「置物やシステムクリーチャーのヤバさを開発は分かっているんだよね? 《梅澤の十手》《石鍛冶の神秘家》はこれまでにない能力だったから調整をミスっただけだよね?」と期待していました。

特に、2011年からの公式の方針「新世界秩序」(http://mtgwiki.com/wiki/%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%A7%A9%E5%BA%8F)により、複雑過ぎるという理由から構築レベルのタッパーやルーターやティムはほぼデザインされなくなりました。私は「やっぱり置物やシステムクリーチャーは減らした方がいいよね! ウィザーズの開発チームはやっとわかってきた?」と勝手に思っていました。
構築レベルのタッパーやルーターは基本セット2012(2011年)の《ギデオンの法の番人》《マーフォークの物あさり》以降ほぼ収録されなくなり、構築レベルのティムはワールドウェイク(2010年)の《狡猾な火花魔道士》以降ほぼ収録されなくなっています。ついでに言うなら、1マナのマナクリーチャーはマジック・オリジン(2015年)以降基本的に収録されなくなりました。

しかし、2002年のコモンのティム《火花鍛冶》について言及した2017年の公式コラムを見て、私はウィザーズの開発チームに誤った期待をしていたことに気づきました。
「レア。レアは何が出てくるかわかりません。そのセットで最も強力な個別のカードはほぼ全てレアか神話レアです。それらに負けるとムカつくかもしれませんが、そのカードがコモンかアンコモンならばもっとムカつくでしょう。《火花鍛冶》、あなたのことを言ってるんですよ。」
https://mtg-jp.com/reading/translated/ld/0018221/

私はレアリティに関係なく、強力な置物やシステムクリーチャーはゲームをつまらなくすることが多いと思っていたのですが、開発チームの認識はそうではなく、リミテッドを破壊しなければ強力な置物やシステムクリーチャーも許容される、というものだったように思えます。

この認識の違いとカードパワーの向上のため、近年のウィザーズは私がしてほしくなかった「置物やシステムクリーチャーの強化」路線に進むようになったのではないかと思えます。
この路線が明確になったのは恐らく灯争大戦(2019年)で多数のプレインズウォーカーに常在型能力が与えられ置物に近い機能を持つようになってからで(《時を解す者、テフェリー》、あなたのことを言ってるんですよ。)、続くエルドレインの王権(2019年)では《幸運のクローバー》等の壊れた置物やシステムクリーチャーが多数登場しました。
ちなみに、灯争大戦では久々の構築レベルのタッパー、しかもコモンである《法ルーンの執行官》が収録され、エルドレインの王権でもレアながら構築レベルのタッパー《巨人落とし》が収録されており、新世界秩序はこの時に終了したのかも知れないと考えています。

ローウィン(2007年)でカードとしてプレインズウォーカーが初めて登場した時、否定的な声が多数ありました。
私は当時も今もプレインズウォーカーに否定的ではなく、そういう声の具体的内容を確認はしていませんでしたが、それらの中に、強力過ぎる置物になりかねないという懸念はあったのではないかと思っています。
その懸念は、灯争大戦で顕在化したと言えるのかも知れません。

ただ、開発チームも全くの無策で置物やシステムクリーチャーの大幅強化を行ったわけではなく、そういったカードがあっても環境が壊れないようある程度は工夫をしていたように思えます。
それは、そういった置物やシステムクリーチャーを除去できる構築レベルのカードを各色にデザインすることです。

本来クリーチャー除去が苦手なはずの白や青や緑にも強力なクリーチャー除去カード(それぞれナイトメア能力等、バウンス等、格闘等)を次々与え、それまで不可能だった黒でのエンチャント除去や、青でのアーティファクト除去も可能にしました(《鴉変化》。例外的なカードだそうですが……)。また、それらの除去カードに汎用性が高くメインから投入可能なものが多いのも特徴でしょう。
言ってしまえば、「壊れた置物やシステムクリーチャーをじゃんじゃん作るけど、各色にそれを除去できるカードをじゃんじゃん作るから大丈夫だよね」ということだったのかも知れません。さすがに《ゼロ除算》は汎用性が高すぎてそれ自体が禁止になりましたが。

しかし、コントロール系のデッキならまだしも、アグロやミッドレンジ系のデッキが置物やシステムクリーチャーに安定して対処できるほどの除去を採用することは難しく、2019年以降のスタンダードではアグロやミッドレンジ系のデッキ同士の対戦は運の要素が大きくなり過ぎているように思えます。

続きます。

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